あれは(元)夫と結婚前に
同棲していた時のこと
当時は貧乏人同士だったので
私と夫、そしてうさぎ1匹が
6畳一間の安いアパートに暮らしていた
狭い空間によく2人の人間が住めたものだと思う
しかしそこでの暮らしは
どうやら我々2人と1匹
だけではなかったらしい…
夫が仕事に行き、私だけが家にいた夜
料理用の肉を取ろうと
冷蔵庫の方に移動すると
その横にいるウサギが目を見開き
ガッタガタ震えているのだ
ウサギを飼った事のある人なら
ご存知だろうが
彼らは本気で怯えると
目玉が転がり落ちるんじゃないか
というくらい見開く
正直めっちゃ怖い
私はウサギの尋常じゃない目玉に
特に寒い季節でもないし
どうしたのだろうかと思いつつ
目当ての肉を取り出し
冷蔵庫に背中を向け
シンクに立った
その時
ドサッ
という音が聞こえた
見ると二人暮らし用の
小さめの冷蔵庫の上に置いてあった
ウサギの餌が下に落ちていたのだ
落ちていた場所は
冷蔵庫の扉の前だった
扉の開閉で落ちないよう
わざわざ冷蔵庫の天板の奥に
置いていた餌だ
それが
冷蔵庫の扉の前に
落ちている
何故だ…
とりあえず拾うかと
餌に手を伸ばしたその時
私の右手を
誰かが掴んだ
姿は見えない…
しかし冷たい5本の指が
私の腕をしっかり掴んでいた
そう
セクハラである
当時私は20代半ば
今の私から見ればピッチピチの
爆美女である
※外見への見解は個人差があります
何をしてくれとるんやと
お前が気軽に触って良い存在じゃねぇわと
憤った
しかしこういった迷惑行為をする輩は
こちらが反応すれば
さらに付け上がる場合がある
勘違い脳みそ花畑な奴かもしれない
生前もちょっと目が合っただけで
好意を寄せられていると勘違いした
タイプの可能性もある
うさぎもおそらくこの勘違いセクハラ奴が
見えてしまって「アワ…アワワ…」
と怯えているのだろう
いくら私が爆美女であったとしても※
あるいはうさぎを見に来ていただけだとしても
本当に迷惑なので
とりあえず私にできる
最大の攻撃であるシカトをかまし
見えない相手に対する威嚇攻撃として
鶏ももに包丁をブッ刺した
死んでいる奴よりも
包丁を持てる人間の方が
より恐ろしいのだと
教えてやろうと思ったのだ
徐々に調理に集中し
すっかりそんな事を忘れて
我ながら美味しいご飯を完成させた頃に
ふと
そういえばウサギは
大丈夫だろうか
あのセクハラ透明人間と
同じ空間(いうて3歩の距離)
に放置してしまっている
そう思いケージを覗き込めば
フガフガとのんびり寝こけていた
どうやらセクハラ犯は消えたようだ
やはりシカト
シカトは最良の対応
好きの反対は無関心である
今後も何かあれば絶対にシカト決め込もう
そして場合によっては
この部屋の人間の方が
やべー奴なんだということを
アピールしていこう
そう心に決めた夜だった
例え相手が生者であれ死者であれ
セクハラ、ダメ、絶対
なおその部屋にはその後2年間住んだ
終わり
